左腕
クレアの左腕をつかみ、強引に立ち上がらせる。
「…もう少し、優しく立ち上がらせてよ」
クレアの抗議を聞かずにレイは厳しい表情で告げた。
「…街の人々を連れて、すぐにここを立ち去れ…いいな」
しかし、クレアは表情を一変させ、左腕でレイの襟首をつかんでだ。
「そんなことが出来るわけ無いでしょ!」
「…話はシンから聞いた…」
クレアは顔をレイに、更に近づけて叫ぶ。
「なら、わかってるでしょ!あたしは…」
「…せっかく拾った命を捨てる気か?」
レイは僅かに怒気を含んだ声で言った。
それが今までのレイの怒りとは次元の違うものである、とクレアが気づくのには、それ程の時間は必要なかった。
「…お前の命が今あるのは、命がけでお前を逃がした男がいたからだろう…それなのに、お前は自分のくだらないプライドの為にその命を捨てる気か?甘ったれるのもいい加減にしろっ!」
レイはクレアに背を向け、
「…それに、お前の助けを必要としている者達もいることを忘れるな…」
混乱し、おろおろしている街の人々を指差した。
「…これ以上、俺は何も言わん…好きにしろ」
クレアは一瞬の沈黙の後、
「…ちゃんと生きて帰って来なさいよ…あたしを置いて行こうとしたこととか、言いたい事がたくさんあるんだから…」
混乱する街の人々の群れに駆け込んで行った。
しばらくすると、街の人々はクレアの誘導に従って行動を開始し始めた。
街の人々を見送り、完全にその姿が見えなくなった事を確認するレイ。
「…そろそろ出て来たらどうだ…」