兄
それなのに。
それなのに。
何故、兄の目は昔と全く変わっていないのだ?
ひたすら前を見つめ、あるべき理想を描き、真実を追い求めた、その目と。
その瞬間レイとアレックスの目があった。
(迷うなっ!今、俺とお前は敵なのだ。敵を切り捨てる事を迷ってはいけない、アレックスッ!)
哀しみをたたえたレイの目がそう言っている。
アレックスはますます訳がわからなくなった。
レイは自分に斬られる事でしょくざい贖罪をしたいのだろうか?
だが、そんなことで許されるとはレイは思ってはいないだろう。
しかも、『今、俺は裁きを受ける訳にはいかない』と言っていたではないか。
どう言う事なのだ?
「…迷うな、と言っているだろう、アレックス。俺が今、攻撃を仕掛けていたなら、お前は死んでいたぞ…」
レイの言葉で我に帰るアレックス。
そしてロングソードを下ろす。
アレックスには一つ、レイにどうしても聞いておきたいことが出来た。
「…一つ、聞こう…あんたは昔のレイ=バーンハルトではないのか?」
「…くどい…」
「…なら、なぜ、さっき俺に攻撃を仕掛けなかった…?」
辺りを沈黙が包む。
「…先程も言ったが…訳を話す訳にはいかない…どうしても知りたければ…」
「知りたければ?」
「…俺を倒してみろ…」
アレックスは決心を固めた。いや、正確にはレイによって決心を固めさせられた。